2019.11.25

省エネスパコンGreen500 日本の実力

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2019年11月スパコンで消費電力1W あたりどれだけの計算ができるかを競うGreen500において富士通の「富岳A64FX プロトタイプ」が第1位、PEZY Computing の「NA-1」が第2位を獲得しました。

省エネスパコンGreen500 日本の実力
富岳は、ポスト「京」のプロジェクトとして2020 年の完成まで1100億円の予算で、京の時と同様主体は理研(理化学研究所) によって、ベンダーパートナとして富士通が製造などを請け負うという体制で開発が進められています。日本のフラグシップスパコンとして京の100倍の性能を目指すということですが、演算器にかけるお金を抑え、メモリにお金をかけて多くのアプリケーションで高い性能となるように設計しているとのことで、2011年にスパコン性能ランキングであるTOP500で1位をとった京が10ペタFlopsに対し、このベンチマークでは5分の1の約2ペタFlopsでした。但し、京は約3万世帯分の消費電力で1日約700万円もかかっていたということですから、省エネを優先することは重要です。

ここで注目なのは、20名ほどの日本のベンチャー企業であるPEZY Computing社のNA-1が2位に入ったということです。
この会社は、Exascaler Inc.とともに齊藤元章氏が代表を務めていた会社で、2017年にはGreen500のトップ3位まですべてを独占しています。しかも、その時の1位である「Shoubu(菖蒲)system B」は、3(18か月)連続1位となり、もしまだ稼働していたら、2019年時点でも1位となる素晴らしい省エネ性能です。
このスパコンが高性能で低電力なのは、自社開発の2048個のプロセサコアを集積したPEZY-SC2チップが、NVIDIAのGPUでは、多数のCUDAコアが同じ命令を実行するSIMT(Single Instruction Multi-Thread) という構造となっているのに 対して、PEZYのプロセサは、各コアが異なる命令を実行できるMIMD(Multiple-Instruction Multiple-Data) という構造になっているからです。そして圧巻なのが、32枚のPEZY-SC2ボードが収容できるブリックは、2台×8列で液浸槽に収容 されています。液浸槽は、絶縁性の液体であるフロリナートで満たされます。これは、空気と比べると密度が高いので、同じ流量で1500倍程度の熱を運ぶことができ、高発熱のチップを高い密度で詰め込んでも冷却することができるのです。

当時、理論的には京の半分以下の予算で、京の100倍の性能のスパコンを作ることができると言われていた齊藤元章氏の会社ですが、助成金不正使用疑惑によって、国からの支援も得られなくなってしまったことが残念です。
高速性を競うスパコンTOP500では8位とかなり遅れをとってしまった日本ですが、このような優秀な技術は芽を絶やすことなく育てていってほしいと期待します。


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