2020.01.06

酸化ガリウム半導体の衝撃

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パナソニック社が、半導体事業子会社を、2020年6月を目途に台湾の会社に売却するニュースでは、日本の半導体技術が海外に流出する懸念が問題視されている一方、世界を一変させるほどの画期的な半導体が日本で誕生しています。

酸化ガリウム半導体の衝撃
そもそも、「半導体」とは、電気を通す「導体」と、電気を通さない「絶縁体」に対し、温度が低いときは電気を通しにくく、温度が高いときに電気を通しやすくなる特徴を持っています。
半導体の素材としては、元素記号Siで表せる金属ケイ素の「シリコン」が有名ですが、そのシリコンを半導体用として純度を上げるためには高い技術と多くの電力が必要です。そんな中、半導体は電化製品には欠かせない存在なので、より小さく省電力なものが求められており、さらに効率的な素材での開発が進んでいます。

たとえば、シリコン(Si)と炭素(C)で構成される化合物半導体材料の炭化ケイ素(SiC)の基盤から作られるパワー半導体は、電気自動車などの車載充電器や、インバーターなどに使用するとシリコンに比べ小さく、電力効率などをアップできるということで、実用化が進んでおり、列車で使用して最大40% もの省エネを実現している例もあります。
また、パワー半導体として青色LED などにも利用されている窒化ガリウム(GaN)は、シリコン半導体と比べ、電力をONにした時の抵抗の低さがあり、いままでのAC/DCアダプタに使われていたダイオードやトランジスタを窒化ガリウムに置き換えると、電力の損失を抑えられ、発熱量も減り、電力変換器の小型化などが期待されます。
一方、この炭化ケイ素や窒化ガリウム二つのパワー半導体の性能を圧倒する凄い酸化ガリウム(Ga2O3)の半導体の開発を、日本がけん引しています。酸化ガリウムは、理論的な性能を定量的に評価するバリガ性能指数を比較すると、シリコンの約3,000倍、炭化ケイ素の約10倍、窒化ガリウムの約3倍と高いので、次世代の高性能半導体として期待されています。
この酸化ガリウム半導体の開発は、各国の先進企業がしのぎを削って進めていますが、京大初のベンチャー企業、フロスフィア社では、ミストドライ法で高価な炭化ケイ素や窒化ガリウムを上回るパフォーマンスの半導体を、酸化ガリウムで安価なシリコンと同じ程度のコストでの製品化を予定しており、そして、ノベルクリスタルテクノロジー社は、口径4インチの酸化ガリウムウエハーの量産を2020年度に開始する予定です。

日本の高度な技術力が、家電製品の小型化、省電力化をますます推進してくれそうです。


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