BPR(業務プロセス改革)が目指すもの


BPR(Business process re-engineering:ビジネスプロセス・リエンジニアリング)は、組織内のワークフローとビジネスプロセスの分析と設計に焦点を当てた、コストを削減し業務の効率化をするために、作業の方法を再考して再設計する手法です。

元マサチューセッツ工科大学(MIT)教授のマイケル・ハマーと経営コンサルタントのジェイムス・チャンピーが1993年に出版した「Reengineering the Corporation: A Manifesto for Business Revolution(リエンジニアリング革命―企業を根本から変える業務革新)」によって、多くの企業からもBPRという手法が注目されました。
しかしながら、本来は1990年にマイケル・ハマーが、ハーバードビジネスレビューに「Reengineering Work: Don't Automate, Obliterate:リエンジニアリング作業:自動化しない、抹消する」という記事を発表したことが、BPRの元になっているようです。
ここで注目したいのは、現在ではRPAなどの自動化がもてはやされておりますが、ハンマーの主張は単純で、行われている作業のほとんどは顧客に何の価値ももたらさないので、こうした作業は自動化によって加速するのではなく、削除してしまう必要があるという考えです。

DX(デジタルトランスフォーメンション)であっても、IT活用が前提でAI等の最新テクノロジーを使って業務の変革を目指しており、自動化はDX実現のための重要な要素です。
BPRに似た言葉で、BPI(Business process improvement:業務プロセス改善)という言葉も一部では使用されていますが、こちらは、既存業務のプロセスを見直し、改善するためのフレームワークによる手法が多いようです。
マイケル・ハマーの本を日本では、”リエンジニアリング革命”と題しているため、あえて、ここではBPRについて「業務プロセス改革」という言葉を使用しています。
"改革"と”改善”では、受ける印象も違い、”改革"にはぶっ壊して全く違うものを創造する勢いが感じられます。
一方”改善”では、よく企業内の改善運動に見られるように、現状業務のアラを見つけて、分かっていてあえて伏せていた部分も表に引っ張りだし、その問題点を細目に修正していくイメージがあります。
もちろん、ケースによっては、”改善”が功を奏し、効率化やコスト削減ができますが、概ね代わり映えのしない業務改善では、他社より優位に立つ、抜本的な変更は行われないケースが多くなってしまいます。

時代遅れのシステムを現状でも耐えられるように手直しすることと、BPRが目指す”改革”は、根本的に異なるということの理解がまず必要です。
企業で、意図していた価値が得られていないシステムは、自動化で小手先の改善を行うのではなく、いっそ破壊し消滅させるまで取り組みができるかどうかが、大きなポイントとなります。


BPRの根幹思想は、リエンジニアリング作業は、自動化しない、抹消する


BPR, DX