「Gato」というAIのジェネラリストエージェント


DeepMind社は、「Gato」というAIのエージェントを開発しました。人類はAIを開発しはじめた当初より、AGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)の誕生を待ち望んでおり、異論も存在しますが、Gatoの誕生がそれに1歩近づいたといえるのではないでしょうか?

Gatoは、マルチモーダル、マルチタスク、マルチボディのジェネラリストポリシーとして機能し、ゲームや、キャプションイメージ、チャット、実際のロボットアームを動かして物をつかむといった600種類以上に及ぶ動作を実行できるとのことです。従来のAIが、特定分野であればとても優れた能力を発揮することは言わずと知れたことですが、複数の分野でもマルチに対応できるAIが現実化できていることは、誠に喜ばしい限りです。Gatoが出来ることが、まだまだ高度な動きを期待できないことによって、AGIとはほど遠く否定的な意見もあるようですが、そもそも専門職のイメージが強かったAIにジェネラリストが現れたことは画期的なことに思われます。

自分で考え、自律して学習できないのであればAGIにはほど遠く感じるのも理解できますが、ひとつのAIがいろいろな役割を演じられることが素晴らしいです。
人間の細胞をイメージすれば、もともと同じだったその細胞たちが配置された場所で、それぞれが適切な単純な動きができるように変化することで、身体全体が構成されていることがわかります。つまり、職場の役割と同様、それぞれ配置された人が与えられた環境に応じて適切な役割を実行できるので、組織が成り立つのと同じです。結果的に、AGIが実現する時には、高度なAIひとつで実現できるのではなく、単純な動きしかできないかもしれませんが、与えられた仕事をこなせる変幻自在なAIの集まりで構成されるはずです。どの塊をもってAGIと見なすかということで意見が分かれるかもしれませんが、多種のマルチタスクこなせるAIの集まりでないと、人間のような汎用的な人工知能は構成できないでしょう。

人間が脳からの指令だけで動いているわけではなく、無意識の動作によって生活できるように、結果的にはさまざまな役割を担当する個々のAIが連携してひとつの塊になったとき、はじめてAGIになるのだと思われます。 そうでなければ、すべてにおいて人間より素早く反応できるAIが想像しづらいです。
言葉で伝えるのは難しいですが、自律できるということは、情報をインプットしたらそれをどのように処理するかについて、膨大なケースに合わせ適切なプログラムを増やしていくことと同じです。技術の進歩によりとてつもない量のプログラムが、瞬時に働くことができるようになったため、さも自己学習しているような動きが可能になったのだとも言い換えられます。プログラムによって、情報があればそれを入手し処理することを繰り返し、自分でプログラムも作成できるように設定しておくことで、自己の能力を増殖させ処理能力が追いついていけば、理論的には、生物と同じように自律してAIが自身で考え動いているように見せることは充分可能です。つまり、コンピュータの処理能力がどんどん高度化して追いついていけば、自己学習をして自らを成長させるプログラムがAIをどんどん進化せることになるでしょう。
そういった意味で、いろいろな役割をこなせるジェネラリストのGatoは、現時点でできる動作のレベルが低くても、今後ますます成長が期待できる可能性を感じさせます。

かつてのスーパーコンピュータが、手のひらサイズのスマートフォンになっている現代までの劇的な変化をみれば、私たちはシングラリティを迎える2045年を待たなくても、近い将来AGIの姿を見ることができるかもしれません。


ジェネラリストのAIエージェントは、AGIを期待させる未来への希望


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