加速するAIスパコンの開発競争


スパコンTOP500でのエクサスケールレベルの1位争奪競争とは別に、近年AIの分野では、AI用に最適化されたAIスパコンのとてつもない高性能な開発競争が激化しています。
特筆すべきは、スパコンTOP500では、国家レベルでの研究機関での争いというイメージが強かったのですが、AIスパコンは単なる技術の競い合いというよりも、企業を中心とした実用・採算を求めたハイレベルな戦いとなっているようです。

旧フェイスブックであるメタのAIスパコンは、NDIVIAのA100 GPUを使用し、2022年半ばにはAIスパコンの世界最速になる計画であるとのことで話題になりました。自然言語処理や音声認識の分野でこのAIの精度が上がれば、国際的なSNSを有しているこの企業は、バーチャルなプラットフォームの上で、同時通訳によって異国の人とでも自然な会話ができることが夢ではなくなりそうです。また、話題沸騰のメタバースやAR空間においても、AIによって利便性が向上していけば、さらに身近な存在になってくるでしょう。

他にも、GoogleやMicrosoftをはじめ、日本企業の富士通、NECなど多くの企業がこのAIスパコンの開発競争に関わっており、ある意味ブームになっています。
その中でも、テスラのDojoスパコンには、当初使用されていたNDIVIAのA100 GPUに代わって、独自の354個のトレーニングノードから構成されている「D1」という、テスラ独自のユニークなチップが使用され注目されています。1個のD1チップで22.6テラフロップスのFP32(単精度浮動小数点演算)性能を提供するとのことです。たとえば、富岳は236個のキャビネットで構成されていますが、Dojoは、わずか10個のキャビネットで構成されており、サイズは世界最小、もし、64個のキャビネットで作れば富岳のパフォーマンスをも上回るといわれております。
このDojonoスパコンには、テスラ車に搭載された8つのカメラの走行映像の情報が集められ、膨大な量のデータをAIで学習しトレーニングすることで、自動運転システム「FSD」のソフトウェアを常に改良します。そして、その最新版ソフトウェアの情報をFSD搭載するテスラの車に送信して、安全な走行ができる仕組みを構築するとのことです。
こうなると、自動車メーカーのイメージが変わってきてしまいますが、このDojoは、自動運転のみならず、現在計画されている人間にとって危険な作業や、単純な作業を代行する人型ロボット「Tesla Bot」にも応用されるとのことです。

スパコンは、気象情報や、宇宙開発での使用のイメージが強かったのですが、AIスパコンは実用的な活用がアナウンスされてきているので、かなり身近に感じられます。30年前のスパコンの性能が、現在はスマホの大きさで生活の中で使われていることを考えると、どんな将来がやってくるのか楽しみになりますね。


AIスパコンは、ロボットへの応用が期待される


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